(x+a)(x+b)の展開を面積とStep by Step での理解

(x + a)(x + b) = x² + (a + b)x + ab

中学校で習ったこの式を、覚えている人は多いと思う。だが「これは何をしている式なのか」と聞かれると、答えに詰まるのではないだろうか。展開のやり方は手が覚えている。けれど、それが何の作業なのかは、たぶん教わっていない。

この記事では、その式が「二桁×二桁のかけ算そのもの」だという話をする。そして、その様子を実際に触って確かめられるツール(面積図でわかる 二桁×二桁)を紹介する。子ども向けの説明としても使えるが、どちらかというと、大人にもう一度あの式を見てもらうために作った。

27×34を、面積で考えるとどうなるか

27×34を計算するとき、多くの人は筆算を思い浮かべる。縦に並べて、下の桁から順にかけて、位をずらして足す。速いし、間違えにくい。手続きとしてはよくできている。

ただ、筆算は「なぜその位置にずらすのか」を説明しないまま進む。位をずらす操作の意味を聞かれて答えられる大人は、そう多くないはずだ。

これを面積で見ると、景色が変わる。たて27・よこ34の長方形を思い浮かべてほしい。27を「20と7」、34を「30と4」に分けると、この長方形は縦横それぞれに一本ずつ線が入って、4つの部屋に分かれる。

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  • 20 × 30 = 600
  • 20 × 4 = 80
  • 7 × 30 = 210
  • 7 × 4 = 28

この4つを足すと918。27×34の答えと一致する。当たり前といえば当たり前なのだが、この「4つに分かれる」という形が、そのまま冒頭の式になっている。

(20 + 7) × (30 + 4)

の展開が

20×30 + 20×4 + 7×30 + 7×4

であり、文字に置き換えれば (x + a)(x + b) の展開そのものだ。つまり中学校で習ったあの式は、小学校でやっていた二桁のかけ算に、後から名前と記号がついたものだった。

順番が逆に感じられるかもしれない。だが実際には、私たちは意味を知る前に手続きを覚え、意味を教わるころには、それが同じものだと気づけない状態になっている。式と計算が、別々の引き出しに入ってしまっている。

筆算から離れて、4段階で見てみる

もうひとつ言いたいのは、二桁×二桁の計算は筆算だけではない、ということだ。

面積で捉えると、計算は4段階になる。大きいかたまりから順に、600 → 80 → 210 → 28 と積み上げていく。筆算より手数は多い。速さでは負ける。

それでも4段階で見る利点がある。ひとつは、数の大きさの見当がつくこと。最初の 20×30=600 の時点で、答えが900前後になることが見えている。筆算では最後まで計算しないと答えの規模が分からないが、面積では一番大きい部屋がほとんどを占めていることが目に入る。

もうひとつは、暗算に応用が利くこと。27×34を頭の中で解くとき、筆算をそのまま脳内で再現するのはつらい。だが「600と、80と、210と、28」なら、なんとか足していける。実際に暗算が得意な人は、多かれ少なかれこの分け方をしている。

そしてもうひとつ。この4段階は、そのまま中学校の展開につながっている。小学校で「4つに分ける」という見方に触れていた子どもは、(x + a)(x + b) を見たときに「あ、これは前にやったやつだ」と思えるかもしれない。筆算だけで通り過ぎると、その線はつながらない。

筆算をやめよう、という話ではない。筆算は速い。ただ、速いやり方だけを渡すと、何をしているのかを見る機会がなくなってしまう。両方あっていい、という話だ。

実際に触ってみてほしい

面積図でわかる 二桁×二桁 は、この4つの部屋を目で見て動かせるようにしたツールだ。ブラウザで開くだけで使える(インストールも登録も不要)。

使い方はシンプルにしてある。

  1. 「たての数」「よこの数」に10〜99の好きな数を入れる(スライダーでも数字入力でもいい)
  2. 「つぎへ」を押すと、4つの部屋がひとつずつ色づいていく(ステップ 1/4 → 4/4)
  3. 部屋が埋まるたびに、下の式と表の対応する項が同時に浮かび上がる
  4. 全部埋まると、4つの合計が答えと一致する

あえて「全部表示」を初期状態にしていない。一度に見せると、ただの答え合わせの図になってしまうからだ。ひとつずつ足されていく途中を見てほしくて、段階を踏む形にした。急ぎたいときのために「全部表示」ボタンは用意してある。

「格子線」をONにすると、長方形の中が1マスずつに区切られる。面積が「1が何個あるか」であることを確かめたいときに使う。数が大きいときは10ごとの表示に切り替わる。

授業・家庭でどう使うか

小学校の先生に:二桁×二桁の筆算を教えたあと、「同じ計算を別のやり方でも見てみよう」と並べて出す使い方を想定している。筆算の代わりではなく、筆算の意味を裏側から見る道具として。子どもが自分で数を入れて動かせるので、板書で描くより試行回数が増える。

保護者の方に:お子さんが筆算につまずいているとき、「なぜずらすの」に答えるのは意外と難しい。この図を一緒に見ながら、「大きいかたまりから順番に足しているんだよ」と話すほうが、伝わることがある。

大人の学び直しとして:これが一番作りたかった使い方かもしれない。(x + a)(x + b) を「テストのために覚えた式」として置いてきた人に、もう一度触ってもらいたい。数を入れて4つの部屋が埋まるのを見ると、あの式が机上のものではなく、面積という手触りのある話だったと分かる。

自分の年齢を入れてみるとか、今日の日付を入れてみるとか、その程度の入り方でいい。9×9でも99×99でも、起きていることは同じだ。

数式に、手触りを戻す

数学が苦手だったという人の話を聞いていると、「意味が分からないまま手順だけ覚えさせられた」という言い方をされることが多い。手順を覚えること自体は悪いことではない。ただ、手順しか渡されないと、それは自分の外側にある作業のままになる。

(x + a)(x + b) = x² + (a + b)x + ab は、覚える対象ではなく、長方形を4つに分けた形の説明書きだった——そう捉え直せると、式の見え方が少し変わる。

学び直しというと大げさだが、こういう小さな捉え直しは、いくつになってもできる。日本語と英語を切り替えられるようにしてあるので、英語で数学の言い回しに触れてみたい人にも使ってもらえると思う。

面積図でわかる 二桁×二桁 を開く

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